
インタビュー
【作業療法士インタビュー】日常生活で見せる「その子らしさ」に触れることで、最適な支援のかたちが見えてくる
児童精神科の訪問看護ステーションでは、看護師だけでなく、作業療法士も活躍しています。ナンナルでは、遊びを通じたリハビリテーションや日常生活の中での工夫など、作業療法士ならではのアプローチで、子どもたちとご家族をサポートしています。
今回は、ナンナルで働く作業療法士の内田智也、渡辺竜巳、丸田加奈の3名に、仕事の魅力や大切にしていることについて話を聞きました。
<話を聞いたスタッフ>
作業療法士
丸田 加奈(まるた・かな)
作業療法士
内田 智也(うちだ・ともや)
作業療法士
渡辺 竜巳(わたなべ・たつみ)
多様なバックグラウンドを持つ作業療法士のメンバー
――まずはみなさんがナンナルに入職されるまでのご経歴について教えてください。

丸田:私は看護学校を卒業後、まず成人向けの病院で作業療法士の仕事を始めました。その後、訪問看護ステーションを経て、子育て支援室や児童発達支援センターなど、徐々に子どもに関わる仕事にシフトしていきました。
私が児童・思春期分野に興味を持ったきっかけは、発達障害や知的障害のあるお子さん向けのサッカーチームでのボランティア経験でした。友人の誘いで参加してみたものの、最初はお子さんとの関わり方がわからず、「怖い」とさえ思ってしまっていました。しかし、子どもたちとの関わりを通じて、徐々に彼らの成長を間近で見られることに喜びを感じるようになったんです。それからいろいろ勉強していくと、子どもたちの保護者に対する支援の必要性も改めて強く感じるようになりました。
「作業療法士として、もっと子どもたちとご家族にできることはないだろうか」と考えていたときにナンナルを知り、見学に伺うと、そこには私が理想としていた支援のかたちがありました。ご自宅に訪問して支援を届けるナンナルであれば、お子さんだけでなく、ご家族の皆さんをサポートできると感じ、2023年4月にナンナルに加わりました。
内田:私が作業療法士という職業を知ったのは、高校生のときです。私は小中学校で不登校を経験し、さまざまな方から支援いただきました。そのことをきっかけに、自らの経験を生かせる仕事をしたいと考えていたところ、ドラマ『オレンジデイズ』(TBS系列)を見て作業療法士という職業があることを知ったんです。遊びを通じたリハビリによって心身の回復をサポートできる仕事に自然と興味を持つようになりました。
大学進学後は不登校児について研究し、将来は児童・思春期分野に関わろうと考えていました。しかし私が就職活動をしていたとき、この分野に特化した作業療法士の求人はなかなか見当たりませんでした。そのため、大学を出てからはまず成人の精神障害領域や身体障害領域で経験を積んだ後、児童発達領域の作業療法士として放課後等デイサービスに勤務しました。
その後、念願かなって精神科児童思春期病棟で働く機会を得た私は、立ち上げ間もない病棟で作業療法のプログラムをはじめ、病棟の生活環境の見直し、スケジュール構築などをしました。その後、2023年4月にナンナルに入職し、今に至ります。
渡辺:私はもともと精神科病院でデイケアや精神訪問看護、病棟勤務などを担当していました。その後、高齢者専門のクリニックの立ち上げに携わり、管理者として勤務。そのクリニックに非常勤医師として来ていたのが、現在のナンナル代表の岡先生でした。週1回の訪問診療では、私が運転する車の中で、いろんな話をしました。岡先生の価値観やビジョンに触れ、心から患者さんのことを考えるその姿勢に美しさのようなものを感じました。
岡先生がナンナルを立ち上げるタイミングで声をかけていただいた際、児童・思春期分野の経験がほとんどなかった私は「自分に務まるだろうか」と自信を持てずにいました。しかし「対象者を取り巻く家族や地域、行政機関との関わり方は年齢問わず共通している」という岡先生の言葉に背中を押され、2020年3月からナンナルの立ち上げに参画しました。
作業療法士は、子どもたちの未来の可能性を広げる仕事
――作業療法士として、普段どのようにお子様と関わっていらっしゃいますか?
丸田:日によって取り組む内容はさまざまです。一緒にテレビゲームをしたり、お話をしたりして過ごすこともあれば、指先の動きを見るための遊びをしたり、コミュニケーション能力を高めるための活動に取り組んだりする日もあります。また、体の使い方が苦手なお子さんであれば体幹を鍛える遊びを取り入れるなど、状況に合わせてどんな活動をするかを考えています。
渡辺:作業療法士の重要な役割の一つに、活動からお子さんの得意・不得意を見極め、どのように能力を引き出せるかを検討する「作業分析」があります。
たとえば、テレビゲームにしか興味がない自閉症圏のお子さんと関わる際、いきなりボードゲーム遊びを提案しても興味を引くのは難しい。そんなとき、まずはジェンガのブロックを使った簡単な感覚遊びを提案してみるといったアプローチを取ります。お子さんが感覚遊びに興味を示す様子があれば、徐々に難易度を高め、微細な動きの練習につながるようにします。
このように、お子さんの行動を細かく分析しながら潜在的な能力を高め、未来の可能性を広げることを目指すのが私たちの仕事だと考えています。
――子どもたちとの関わりのなかで工夫している点を教えてください。
渡辺:個人的には、私たちが持ち込むツールにはなるべく頼らず、ご家庭にあるものを活用することを意識しています。これは、日常生活の中でご家族の方と一緒に楽しめる遊びを見つけて、コミュニケーションのきっかけを作ることも私たちの大切な役割だと考えているためです。
お子さんの新たな可能性を引き出すだけではなく、お子さんを取り巻く環境全体をよい方向に変えていくという観点から考えると、いつも家にあるものを使うのが理想的なのかなと。“手ぶら”で訪問できたら理想かもしれません。
家庭での様子から、その子らしさが見えてくる

――訪問看護ならではの仕事の特徴はありますか?
丸田:ご家庭に伺うことで、外出時とは違ったお子さんの自然な様子を観察できます。その子が日常生活のなかで何に興味を持っているのか、普段おうちでどのように過ごしているのかといったその子らしさに触れることで初めてわかることも多いんです。ご家族が話してくださるおうちの中での困りごとも実際に見ることができるので、ただお話を伺うよりもリアルにご家族の困り感を理解できると感じています。
また、病院や施設では大勢の中での関わりになりますが、訪問看護の場合は1対1でお子さんとじっくり向き合えます。よりお子さんのことを理解する時間を確保しやすいのも訪問看護のメリットですね。
内田:柔軟な対応が求められる場面が多いという訪問看護ならではの難しさがあるのも事実です。
一方で、お子さんの生活の様子を見られることから、どのように関わっていけばいいかを判断しやすいという利点もあると感じています。
また、病院と比べると、支援の成果が見えやすいのも訪問看護の特徴だと感じます。実生活によい変化が見られたときには、やはりやりがいを感じられます。
――ナンナルならではの支援の強みはどんなところにあると思いますか?
内田:チームで相談しながらお子さんの支援ができる点は大きな強みだと考えています。以前のナンナルでは、1人のお子さんにつき担当者1名で支援をしていました。しかし、より多角的な視点から最適な支援を届けるため、今年に入ってからチーム制を導入しています。
さらに、週に一度のケースカンファレンスや、お子さんの対応に悩んだ時にチームでケースについて話し合うミニカンファレンスなど、困ったときに相談する場も設けるようになりました。この取り組みは、看護の質向上だけでなく、スタッフの働きやすさにもつながっていると感じています。
丸田:訪問看護では1人で行動する時間が長いので、孤独やプレッシャーを感じたりする瞬間もあります。また、担当するお子さんとの関わり方について悩む瞬間もあります。そんなときに、チームで話し合いができる場があると、悩みを1人で抱え込まずに済みますし、とても心強いんです。複数のスタッフでお子さんの支援に入る際にも、共通認識を持ちながら、同じ意図で関わることができるのはチーム体制のおかげだと感じています。
――ナンナルで働いていてよかったと思うのはどんなところですか?
内田:尊敬できて信頼できるメンバーと一緒に働けることですね。渡辺さんは私が困ったときの一番の相談相手で、いつも的確なアドバイスをくれるので頼りにしています。いつも温かい言葉をかけてくださる丸田さんは、私の心の支えになっています。子どもとの関わり方も優しさに溢れているので、そういった姿を間近で見て学ぶことも多いです。
渡辺:私は内田さんの吸収力を尊敬していますよ。柔軟性があって、新しいことにも素直に取り組める。だからこそ、初対面のお子さんでも心を開いてもらえるのだと思います。丸田さんは経験豊富で、お子さんのことを本当に深く考えています。その独自の視点が私にとって新たな気づきにつながることも多く、勉強になります。

丸田:渡辺さんの魅力は人を惹きつけるキャラクターにあると思います。なかなか心を開いてもらうのが難しいお子さんでも、渡辺さんはすぐに距離を縮められるんです。内田さんはまるで温かな空気がそこに流れているかのように、お子さんと自然体で関わっている姿が素敵です。一緒に訪問すると、お子さんの緊張がいつの間にかほぐれる。そんな場面をよく目にします。
子どもと一緒に学び、成長できる方が活躍できる職場
――ナンナルでのお仕事は、どのような方に合っていると思いますか?
内田:子どもたちとの時間を純粋に楽しめる人が合っていると思います。「支援しなければ」「がんばって関わらなければ」という責任感ももちろん大切ですが、個人的には子どもと一緒に楽しく過ごすことこそが大きな支援につながるとも思うんです。私自身は、子どもたちからアニメやゲームのことをたくさん教えてもらったおかげで、新たな楽しみを見つけることができました。この1年でずいぶん子どもたちの趣味や流行りに詳しくなったと思います。
丸田:私もナンナルで働き始めてから、子どもたちからたくさんのことを教えてもらいました。子どもたちと同じ目線に立ち、一緒に考えられる方であれば、きっと楽しく働けるのではないでしょうか。
渡辺:「新しいことを学びながら、日々成長していきたい」という意欲がある方に合っていると思います。これまでの経験や知識に固執せず、常に新しい視点から支援の在り方を考えられる方であれば、きっとお子さんの可能性をより広げることができると思います。
子どもと関わる仕事が初めての方にもぜひチャレンジしてほしいです。児童精神科の訪問看護はまだまだ一般的には珍しい領域ですが、だからこそみんなで協力しながら、よりよいケアを目指すことへのやりがいが感じられると思います。ナンナルで一緒に新しい道を切り開いていきましょう。

取材・執筆:西村和音
編集:株式会社ぺリュトン