インタビュー

病棟勤務時代に感じた「子どもの支援が噛み合わない」を訪問看護という立場でつないでいきたい

2022年入社/看護師 学業所長/正社員
江東/Sさん

ーー現在担当している仕事について教えてください

利用者さんのご自宅を訪問し、お話を伺います。訪問看護の内容は利用者さんごとに異なるため、あらかじめ立てた看護計画に基づいて対応します。利用者さんが目指す姿や過ごしたい生活がある場合は、それを実現するための支援を行いますが、目標が明確でない場合でも少なくありません。そのような場合は、利用者さんと一緒にどのような可能性があるかを探ることを、強制せずゆっくりと進めていくことが大事だと考えています。家族だけでは解決が難しい課題にも寄り添い、支援するように心がけています。

ーーナンナルを志望した理由は?

ナンナルを志望した理由は複数あります。コロナウイルスの流行により、私自身や子どもたちの日常が大きく変わり、社会全体の変化を目の当たりにしました。この状況で、子どものメンタルヘルスへの支援が重要だと感じ、病院に行く必要のない、ご家庭に直接訪問して支援できることの価値と支援の可能性を感じました。また、ナンナルには児童精神科の専門医や精神科認定看護師など、子どものメンタルヘルスに深い知識を持つスタッフが多く、学びやすい環境だという点も、これまで小児科の経験しかなかった私にとって重要でした。

ーー訪問看護を志望したきっかけを教えてください

訪問看護を志望した理由についてですが、病院で行われる関係者会議や退院前カンファレンスに参加していた際、病院外の様々な施設から来た専門家たちとの間で意見を交わす中で、互いの間にある意識の違いに気がつきました。特に、サポート方法や役割の分担がスムーズに行われていないことが多いと感じ、自分の視点にも偏りがあるのではないかと考えるようになりました。この経験から、私は訪問看護という新しい道への興味を抱くようになりました。

ーー入社前のイメージとギャップはありますか?

入社前に持っていた精神科訪問看護のイメージは、主に薬の管理やメンタルヘルスケアに限定されているものでした。しかし実際には、子どもたちと普通に遊んだり、日常を共に過ごすことから始める介入が多く、この「普通の関わり」が子どもたちにとって大きな支えとなることを学びました。

専門的な知識や技術は必要ですが、それを前面に出すのではなく、自然なコミュニケーションを通じて関係を築くことに重点を置いています。さまざまな背景を持つ人々との出会いを通じて、柔軟な関わり方を学び、その都度、専門性を高めていくことを心がけています。

ーー一番印象に残っているエピソードを教えてください

最も印象に残っているエピソードは二つあります。一つ目は、自分の気持ちをなかなか言葉にできなかった完全不登校のお子さんの話です。この子は、好きなゲームを通じての会話ではありましたが、最初は自分の感情を言語化することに苦労していました。しかし、彼の小さな努力を何でも褒めることから始めたところ、徐々に心を開き、「訪問看護師さんは褒めてくれるから好き」と言うようになりました。褒めることを増やし、お母さんも巻き込んで褒めるようにした結果、子どもはどんどん話をするようになり、主治医からの提案も受け入れやすくなりました。その結果、放課後等デイサービスに参加し、時折学校にも行けるようになりました。生活上の困りごと、例えば手先が不器用な点も、ナンナルの作業療法士に相談しながら少しずつ改善しています。

二つ目のエピソードは、母親に対して暴力や暴言をふるってしまうお子さんのケースです。この子は欲求や衝動をコントロールできず、訪問看護が介入することになりましたが、薬だけでは解決できない状況でした。そのような中、訪問看護では過去の振り返りを重視する関わりを進めていたのですが、その支援の方法がその子にとってはむしろ苦痛となってしまうということがありました。振り返りのプロセスが子どもにとって負担であったことから、もっと遊びを通じて学ぶような、時間をかけた支援を行うべきだったと考えています。

ーー現在の目標は何ですか?

現在、私は亀戸に新しく立ち上げた営業所で活動しています。ここでは、新しい利用者さんが自分自身で望む「なりたい姿」を実現できるように、彼らと一緒に考え、サポートすることを目標としています。訪問看護は主治医の指導の下で行われるため、クリニックや他の施設とも密に連携しています。私たちのアプローチは、形式的な「訓練」を行うのではなく、利用者一人ひとりの個別の願いや思いを大切にしながら、そばで支援し、関わっていくことだと考えています。

ーーさいごに、将来の目標や夢を教えてください

将来の目標や夢について、いくつか考えていることがあります。まず、私は小児救急の認定看護師の資格を持っています。この資格は、急性期のケアだけでなく、発達の問題や初期の医療受診の必要性を見極める一次救急の面でも非常に役立ちます。現在の訪問看護の現場においても、この知識とスキルを活かしていきたいと考えています。
また、発達障害が社会的により認識されている現在、これらの問題に関わり、支援することができればと思っています。実際の現場で得た経験を基に、子どもたち一人ひとりが健やかに成長できるような社会の構築に貢献していきたいです。理論や研究も重要ですが、私は実践を通じて学び、進歩していくことを重視しています。

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