ナンナルは、新たに2拠点のサテライト開設へ。多様なキャリアを持つ看護師が活躍しています

ナンナルはみなさまのお力添えにより、2周年を迎えることができました。関わってくれたみなさまに、感謝申し上げます。

ナンナルはこれから杉並区のほかに、世田谷サテライト、江東サテライトを開設する予定です。

今回は、訪問看護ステーション「ナンナル」で働く看護師たちのインタビューをお届けします。杉並で所長を務める校條 文、世田谷サテライト管理者就任予定の田村 敦子、江東サテライト管理者就任予定の塩見 祐子に話を聞きました。

<話を聞いたスタッフ>
ナンナル所長 精神科認定看護師
校條 文(めんじょう・あや)

看護師
田村 敦子(たむら・あつこ)

小児救急看護認定看護師
塩見 祐子(しおみ・ゆうこ)

多様なキャリアの専門職が集結するナンナル


ーーまずは訪問看護ステーション「ナンナル」について、改めて教えてください。

校條 訪問看護ステーション「ナンナル」は、2021年4月に杉並区でオープンしてから2年が経ちました。オープンのきっかけは、代表の岡が児童精神科医の仕事に取り組んできたなかで、診察室のなかだけでしか子どもや保護者に会えないことにモヤモヤを感じていたことです。

医療と訪問看護が連携することで、日々の生活に「生きづらさ、育てづらさ」に寄り添いやすくなります。訪問看護ステーションは大人向けが多い現状もありますが、ナンナルは子どもたちとその家族に特化していて、「この訪問看護ステーションの人が来てくれたら安心」「この事業所のサービスは良い」と思ってもらえるような福祉サービスを目指しています。

代表・岡のインタビュー記事はこちら。
https://nannaru-houkan.com/?p=943

ナンナル所長 精神科認定看護師 校條 文(めんじょう・あや)

ーー今回、現在は同じステーションで働く3人に来ていただきました。みなさんがナンナルに来るまでのご経歴について教えてください。

校條 私は海外で生まれ育っていて、「日本人なのに日本で過ごしたことがないのもどうかな」と思い、大学からはひとりで日本に来ました。大学では別のことを学んでいたのですが、卒業後に看護学校に入り直して看護師を目指し始めました。

看護学校時代の実習で児童精神科に行ってからこの領域に興味を持って、ずっと児童精神科でキャリアを積んできました。途中では、勉強のしかたがわからなくなったときに、上司から「認定看護師を取れる」と教わり、2年間かけて取得しました。

また、女の子の思春期の支援にも興味があり、思春期女子病棟を希望しながら行く機会になかなか恵まれず、その間に性暴力被害者支援看護職(SANE)の資格を取得しました。実際に病棟看護で看護技術として活用できたかは実感としては感じていませんでしたが、ナンナルに来てからはこの知識がとても役に立っています。

家庭の事情で病院を辞めたあと、「児童精神科がいい」という思いがどうしても残っていたときに、岡先生から誘いを受けて、絶対にやりたいと即答して開設から入っています。

塩見 私は、看護師になってから、ずっと北海道のひとつの病院で働いていました。小児病棟、救急外来を経験していくうちに、「自分が何をやりたいのか」と悩むようになりました。上司に相談したところ、勉強に行ってみるのはどうかと話をいただき、小児救急看護認定看護師の資格を取りに行きました。

それから小児科外来、NICUに異動してきたのですが、コロナ禍も相まって、「ちょっと1回考え直したいな」と思って病院を辞めたんです。それで実家に帰って、農業をしていました。友達もいたんですけど、一切連絡しないで、ちょっと病んでたのかもしれませんね。半年ほど経って、作物の収穫が終わり、「気分転換できたな、また看護師として働きたいな」と思ったときに声をかけてもらい、ナンナルで働き始めました。

田村 私は看護学校を卒業したあと、最初から児童精神科に入りました。でも、技術をもっと磨かなければならないと思って、希望を出して高齢者の看護を学び、成人の精神科でも勤務しました。

子どもたちは、「家に帰ると家中の掃除をさせられる」「お母さんがいつも酔っ払っている」などと訴えてきます。

その後、成人の精神科で、アルコール・薬物の病棟に行ったときには、ビクビクしながら面会に来るお子さんにも出会いました。そういった経験をして、家庭でのつらさが私のなかでつながって、感じ取れた部分がありました。

体力的に夜勤などが厳しくなってきた頃に早期退職して、看護師ではない児童福祉の仕事に、地域で取り組んでいました。看護師をしているときも、「ゆくゆくは地域に出て仕事をしたい」と思っていたのです。

そのときに岡先生から声をかけてもらって、看護師として地域と関わることのできるナンナルに移ってきました。

看護師 田村 敦子(たむら・あつこ)

待つ姿勢を大切に

ーーナンナルでは、どんな支援をしてきましたか?

田村 摂食障害のお子さんは、私たちが関わっていくなかで、話が徐々にできるようになり、体重が増えていき、良い変化が見られてきています。

大きかったのは、お母様の変化でした。お母様が振り返って、「自分たちによくないところがあったのがわかった。第三者が入ってくれて、本人が話せるようになった」と伝えてくれました。以前はお母様が様子を見て、疲れたら休ませるといった判断が難しかったようですが、今では、お母様が気づいてサポートできるようになりました。

私はこれまで、摂食障害で生命の危険があって入院する方とも臨床でたくさん出会ってきました。どうしても入院が必要な場合ももちろんあるのですが、訪問看護の仕組みでも、自分の困りごとや弱みを話せるようになり、元気になっていく。そして、ご家族も理解してくるという一連の流れは、うまく関わることができたケースだったと思います。

ーーどんな関わり方を意識していますか?

田村 話したくないことは話さなくても今はいいし、私たちは本人が嫌がることはしないと言います。その上で、一緒に考える。

本人がつらいところを私たちが知って、ご家族もさらに理解を深めて、同じ方向を向くことができるとよいと思います。

やっぱり、本人もご家族もみんなの気分が沈んでしまうことがよくあるんです。「何でこんなことになってしまったんだろう」と。そこで私たちが関わるとき、「指導」のようなことはあんまりしていないんですよ。一緒に過ごして、慣れていく過程で、少しずつ状況が改善されていくことを目指しています。

塩見 私は、何かを急かすのではなく、「待つよ」という姿勢を大切にしています。例えば発達障害のある子に対して、ピリピリして、「これをやりなさい」「あれをやってはダメ」と接してしまう保護者の方もいると思います。

でも、私たちは第三者として関わるので、まずは「特性としてそうなるのなら、それで良い」といったスタンスで。引きこもって、布団から全く出てこないお子さんもいますが、「出てこなくても、聞いていてくれたらいいよ」と話したりします。

「こうしてほしい」「こうなってほしい」といった思いが強いほど、大人が子どもを操作しようとして厳しくなってしまうこともあると思うのですが、「待つよ」という姿勢で接することで変わっていくことは、どのケースでもよくあると感じます。

私自身、今は人生でいちばん大らかかもしれません。人は異なっているということを、根底で理解できたんだなって思います。

校條 退院という締切がないから、いいですよね。「まあ、ゆっくりやれればいいんじゃない」と。こういった訪問看護の仕組みなら、目標をちょっと長い目で見てゆるく設定して、大らかに接することができるんです。

入院の場合は、入院の目的がはっきりと決まっていて、治療目標に沿って「これをやろう」「あれをやろう」となりますから。でも、訪問看護は生活がメインにあるので、寄り添って大らかに接しやすいです。

地域に根ざすということ

ーー病院と訪問看護ステーション、仕事の内容にはどんな違いがありますか?

校條 訪問看護ステーションは、昔の病院に近いのかもしれませんね。昔の病棟は自由な感じで、地域と一緒に治していくという意識が強かった。子どもの自主性もすごい大事にしていて、今ではありえないかもしれませんが、子どもたち自身が計画して外出したりすることもありました。地域で受け入れてくれるお店があって、アルバイトをしている子もいましたね。

それが、だんだん病院色が強くなってきてるなって。最近すごくそれは感じて。

田村 だからこそ、入院が長引いていたという課題もありました。地域に完全に戻せなかったり、戻すまでに結構時間がかかったりしていて。今では、地域と一緒に見守っていく病院はほとんどないと思います。

でも、昔よりも入院期間が短く、退院してからの環境がそんなに早く整うわけではないことが多いので、退院したあとに厳しい状況になってしまいかねません。病院は病院、地域は地域とざっくり切られてしまって、どうしたらいいかわからないと感じる子どもや保護者は増えている印象があるので、訪問看護は今後より必要になってくると思います。

「難しいケースこそ受け入れたい」ジレンマを抱えながら

ーー訪問看護で課題に感じていることはありますか?

校條 「こういう難しいケースこそ入ってあげたい」という気持ちをみんな強く持っているから、難しいんですよね。

訪問看護ステーションの課題は、やはり受け入れられる人数に限りがあることですね。

支援を届けるためには、お子さんだけではなく、ご家族とも丁寧に接していく必要があるため、やはり時間はかかります。当然、看護師ひとりが抱えられるケースには限界があります。

塩見 困っているお子さんとご家族は、「わらをもすがる思いで連絡しました」といった連絡をしてこられます。看護師としては、「ちょっと話だけでも聞こうかな」と当然思うのですが、ステーションで受け入れられる人数には限界があって……。それがジレンマですね。

校條 また、これは課題とは言えないのですが、ステーションを卒業していくお子さんは少ないです。卒業するお子さんがほとんどいないので、どのタイミングで卒業とするのか……。一度状況が良くなったとしても、特に学校が小学校から中学校、中学校から高校へと変わるタイミングでは、つまずくこともあります。だからこそ継続的に関わることが大事なんですよね。

少なくとも、辛くなった時の相談相手、話を聞いてもらえる人という存在としてつながり続けていければいいなと思います。あえて卒業という言葉を使わなくてもいいかもしれません。

ありがたいことに、力のあるスタッフが順調に増えているのですが、ひとつのステーションで抱えられるスタッフ数がもう限界なのが実情です。そこで、もうサテライトを開いていくしかない現状があると捉えています。

規模が大きくなっても、大らかな雰囲気で

ーー最後に、今後の展望を教えてください。

田村 ナンナルは新しいサテライトの開設を予定しています。私は世田谷サテライトを担当する予定です。昨年から地域に利用者さんがいて、活動はしてきたのですが、最近本格的に受け入れを増やし始めています。

期待があると思うので、杉並のナンナルでやってきたことを、世田谷でも継続してやっていきたいと思っています。

スタッフのみなさんと協力して、地域でお子さんやご家族の役に立てたらと思っています。

塩見 私は江東サテライトを担当する予定です。

すでに江東地域でのサービスも一部始まっていますが、地域によって特性が異なっていて、需要に合わせたものを提供していく必要があることを実感しています。地域に密着し、「生きづらさ、育てづらさ」に寄り添っていきたいですね。

校條 サテライトの開設で規模が大きくなっていきますが、お子さんやご家族との関わり方は、今の大らかな雰囲気のまま継続していきたいです。

また、利用者さんだけでなく、スタッフを孤立させないことも重要ですね。この分野は、どうしても精神的にしんどくなってしまうこともあります。そこで、みんなでそれぞれの心を守り、健康に働き続けられる環境を作っていきたいと思います。

そのうえで、お子さんやご家族の「生きづらさ、育てづらさ」をサポートできるナンナルであり続けたいですね。

取材・文・写真:遠藤光太

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